ここはつくると食べるがつながるところ。

広島市の東の端、2016年にひっそりと始まった山の上にある、食料品店パネテリエ。人里から離れたこの場所で、夜明け前からトントン、コツコツ。小さな山小屋には、心地の良い音が聞こえてきます。

食べるってもっと複雑で奇跡的。

つくること

人間である私たちに加え、動物や昆虫、植物や微生物。たくさんの命が関わってお店を、このスペースの運営をしています。

何屋さん?とよく聞かれますが、ここは食料品店、エピスリーです。

私たちが日々作り出す食べ物にはとっても長い物語があります。例えばケチャップ。種を蒔く前から土を作り、そこにはたくさんの微生物が暮らし、そのバランスも変化し続けながらおなじものは2つとないトマトを実らせてくれます。それが地面に落ちてしまう直前、一番美味しいところで町のみなさんと一緒に収穫したらそれを持ち寄りここで大切にケチャップに炊き上げます。ケチャップがお店に並ぶ頃には畑では熟れ過ぎた果実を小鳥たちや虫たちが食べている。そんな自然の連鎖の一部に私たちがいて、一粒のトマトをいただいてます。

それってもう、奇跡なんじゃない?

畑を見ているとそんな気持ちになります。それを私たちも日々感じならが調理しています。そしてここを訪れた方へそんな営みを体験していただくため、この山の中にお店を作りました。

山の中の特別な場所

キッチン

山の斜面に突き刺ささるように置かれた3つの海上コンテナ。大海原に浮かぶ船のように、荒れた天候の中でもキッチンをしっかりと守ってくれる建物となりました。閉ざされたキッチンの中では、お菓子づくりやパンづくり、ジャムを炊いたり、果物を絞ったり。ジュースやドレッシング、マスタードまで、農家さんや食品に携わる方々に広く活用して頂くために4種類の食品製造業の許可を取得し、運営しています。

フィールド

敷地の片隅や山の裾野、ご近所の農家さんの畑では、ハーブやお野菜、野草などが元気に育ち、そして、野菜クズや雑草などは動物たちのご馳走になったりミミズのコンポストで良質な堆肥となります。動物やミミズが安心して食べられるお野菜、もちろん農薬や殺虫剤などは使いません。庭を歩くアヒルが安心して虫を食べ、自由に過ごす羊たちが安心して草を食べる。ここではつくると食べるが密接に関わり合いながら小さな小さな循環が生まれています。

一歩進んで立ち止まる

レシピ

時には二歩下がっては考えたり。正しい素材でつくるお菓子たち。パネテリエでつくる食品は、素朴で普通のものばかり。技術さえあれば必要のない副材料や、欲を出さなければいらない添加物は一切排除して、全ての商品について「まっすぐ」に作ることを大切にしています。永遠に完成のないレシピたちは日々私達と共に成長を続けています。そして、いつのまにかそんな普通が珍しいと言っていただける事が増えてきた気がいたします。

美しく

華美なものはないけれど、閑寂の中に光る美しさを。そんな想いで作っています。
そのため、これまでもたくさんは作れなかったり、季節で限られてしまうものだったり、ご期待に添えないことも多いお店でした。

これからも作っては変えて、やめたり始めたり、きっと繰り返していくのだと思います。

美しく。どうぞ末長くお付き合いください。

大自然とキッチンの間で

私たちのミッション

山へ登る細い細い坂の上、里を見下ろすその場所は、お店を開くには極端に不便なところ。そんな山の上にキッチンを構え、都会から一歩外の世界に過ごしています。
雨の日にはジャムを焚き、寒い日にはお菓子を焼く。自分たちで育てたものを始め、良いものであれば各地各国から取り寄せた食材を、大切に受け取り、より良い形でみなさまのキッチンへとつなぐのが私たちの役割です。

Paneterie

お店の名前はパネテリエ。そう、みなさまのキッチンと畑をつなぐパントリー(英語:Pantry 古フランス語:Paneterie)になりたい。そうやってこのお店は始まりました。キッチン裏のパン焼き部屋には瓶詰めの保存食や吊るされたエシャロット、大鍋に薪の棚。そんなお店です。

そして、ここは大自然の山の中。人だからといって、我々も所詮は生き物だということを思い知らされます。私たちもたくさんの生き物の間で生かされている命のひとつ。この場所から生まれる「モノたちコトたち」は日々私達をそんな思いにさせてくれます。